アメリカ大学野球のいい面ばかりに目をとらわれてない?リスクを知った上で真剣に頑張ってほしい。

花巻東高校の佐々木麟太郎くんが世界大学ランキング2位のスタンフォード大学に進学することに加え、返済不要の奨学金が5,000万円ほど出るという記事が出ました。野球留学史上、最高の条件を勝ち取った上で進学することを決めた彼の決断に、私はしびれました。

今後、佐々木くんを追って、野球留学に目を向けていく学生も増えてくるでしょう。しかし、佐々木くんのように1年目からNCAA1部リーグの名門大学へ野球で行けるのは、非常にまれなケースであることをしっかり理解してほしいと思います。

日本人がひたすらに勉強をしても、スタンフォード大学にいける学生は1%以下です。ただ、最初から無理だとレッテルを貼るのはよくありません。無名な選手であっても、名門大学へ野球や勉強で進学することは不可能ではないからです。

ここで大事なのは、しっかり夢の部分と現実をしっかり理解することです。アメリカの大学野球留学の現実と自分の現実レベルをしっかり理解した上で、アメリカ大学野球へ挑戦して「自分を成長させ続ける」ことが何より大事だと考えています。

今回はアメリカで野球をすることに憧れを抱いているあなたに、アメリカで求められるレベルや厳しい面をお伝えします。

「MLB選手を目指す!」だけでは活躍できない

「アメリカの大学へ行って何を目指しているか」と学生たちに問いかけると、必ず「MLB選手を目指す!!」という威勢のいい声を聞きます。正直、目指すことへの響きはいいですが、しっかり自分の野球レベルを成長させ、大学野球での「文武で成績」を残すことが必須になることを覚えておきましょう。

野球だけという考えでは、アメリカに行ってから痛い目にあいます。なぜなら、アメリカの大学スポーツ全体が文武両道というルールの元でやっているからです。

どのくらいの成績が必要かと言えば、野球面では、カンファレンス(日本ではリーグ戦)で表彰されるくらいの野球の成績が必要です。各リーグによっては、選手の成績(打率、ホームラン数、出塁率や防御率など)がHPにまとめられ、ピッチャーと野手のトップ100のランクが用意されています。そこにランクインすることがまず求められるでしょう。そこまで入ることができれば、MLBスカウトやNCAA1部や2部のコーチ陣から声がかかりやすく、MLBからも調査書が届きます。実際に、留学生へもMLBから調査書が来ています。

勉強面では、MLBドラフトの65%以上が指名されるNCAA1部リーグの大学へ行くとして、その条件として、短大の卒業資格(60単位ほど)が必須で、平均勉強の成績=GPAも最低で4段階で3を超える必要があります。授業の特別扱いもないので、いつ勉強して、いつ練習やトレーニングをするかという計画と実行が大事になります

返済不要の奨学金を獲得するハードルの高さ

最初から佐々木麟太郎くんのように、返済不要の奨学金を獲得して、4年制大学へ進学したいという人もいるでしょう。現実的にみると不可能ではありませんが、かなりハードルが高いというのが事実です。


勉強面でいうと、TOEFLという英語試験で大学入学するための点数が取れていることに加え、全米の体育協会のNCAAやNAIAに登録するために、SATやACTと言われるセンター試験の受験が必須です。そうじゃない場合は、大学付属の英語学校で、ESLを受けながら、SATやACTを受けることが求められます。

野球のスキルでいうと、日本でドラフト候補でもない無名な選手の場合、ピッチャーで90マイル145km以上を投げれるキャパを持ち、真っ直ぐと変化球のブルペンと試合でのバッターを相手にしたピッチング動画が必須になります。バッターであれば、試合でのバッティングの様子に加え、スイングスピードや走力、守備の様子がわかる動画が求められます。

だったらアメリカへ行ったほうがいいのかという声がありますが、どっちでもいいです。金銭的な余裕があり、高校野球の最後の夏を終えた後のご褒美としていくのであれば、アメリカのショーケースなどを受けてもいいと思います。アメリカの食事や生活環境、野球の環境がわかるので、自分に合っているかどうかわかると思います。しかし、正直、別に行かなくても、上記でお伝えしたプレー動画がしっかり残っている状況であれば、全く問題はありません。*日本国内でもセレクションという形で実施しています。

憧れだけでアメリカに行ってしまうと、途中で大学を辞めて帰ってくる

私自身、途中で投げ出すということをやめてほしいと思っています。途中でやめたとなれば、日本に帰ってきた時にあなたの経歴は高卒扱いになります。高卒扱いでも働くことはできますが、正直つける仕事は肉体労働がメインで限られてくるし、そこから得られる収入も大卒より低くなります。しかし、そこから必死に仕事の勉強をして、独立をしたり、会社で上のポジションについて給料などをあげることはできます。

我々が留学前の英語学習でスピーキングを重視し、コーチと野球の練習や内容の確認と実施、バイトの経験を必須にしているのには理由があります。それは、勉強する大切さと勉強すればできるようになるということを実体験として持ってもらい、その経験をもとに社会でどう活かすことができるかという経験を留学前に持っておいてほしいからです。そうすれば、留学中の真剣さ=自己成長をさせようというところにつながっていると考えています。

最後に

アメリカの大学野球へ行くことに対し、まずはしっかり現実を知ってほしいと思っています。そして、野球留学生活を終えた自分がどんな姿をしているかを想像し、そこから逆算をして、野球留学で絶対にそうなってみせるという覚悟を持ってほしいと思います。

その覚悟や目標を持つことで、「今の自分が何をしないといけないか」が明確になってきます。自分の人生を真剣に頑張ってほしい、そしてそれを私たちはサポートしていきたいと考えています。

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