アメリカ大学野球のスケジュールとStudent Athlete

アメリカの大学野球は、春にシーズンが行われます。一般的に、シーズンは2月中旬から5月下旬まで続きます。

今回はアメリカ大学野球のスケジュールについて解説します。

大学野球の一般的な年間スケジュール

アメリカでは、大学スポーツと勉強を両立させる文化があり、単位や成績を一定数残さないと試合に出れないというルールがあります。このように文武両道の生活を送っている学生たちは「Student Athlete」と呼ばれ、社会的にも高い評価を得ています。

野球をプレーする学生たちも、秋学期と春学期の大学野球の年間スケジュールに則って生活をしています。それぞれの学期のスケジュールを見ていきましょう。

秋学期(8月末から12月中旬)

アメリカの大学野球において、秋学期と呼ばれる時期は、春シーズンの前に行われる準備期間として活用されます。秋学期には、以下のような目的があります。

  1. 練習や練度の向上
  2. 新入生の探索と獲得
  3. チームの結束力の強化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

練習や練度の向上

 秋学期は、春シーズンに向けての選手たちの練習や練度を向上させるための期間です。チームは、日々の練習やトレーニング、スクリメージ(練習試合)などを通じて、選手たちの技術や体力を高めます。また、春シーズンでの活躍に向けて、新戦術やプレーの練習なども行います。この時期にいかに試合で活躍できるかで春学期のシーズンでレギュラーを取れるかどうかも決まります。

ここで大事なことは、コーチやチームメイトとコミュニケーションをしっかり取りながら関係を作り、時間が空いている時には自分の能力をあげる練習やトレーニングを継続することです。基本、チームでの練習時間は2−3時間しか行わないため、いかに「自分の成長時間」を作り、レベルアップできるかが重要となります。

コーチやチームメイトと一緒にバッティング練習やトレーニングをしていくことで、英会話力を鍛えながら関係もしっかり作っていくことができます。

新入生の探索と獲得

大学野球は、毎年新しい選手が加わるため、秋学期には新入生のスカウトやリクルート活動が行われます。秋学期は、新入生や編入で別の大学から入ってきた学生のレベルを図りながら、試合で勝つためにいかに選手を使っていくかを監督側が試す時期となります。新入生がチームに加わることで、チームの競争力が向上し、春シーズンでの活躍が期待されます。

よくあるのが、新入生の「Study Hall_と呼ばれる練習後の勉強会です。単位を取ることと成績を残すことが求められるため、特に新入生は勉強時間をチームが強制に作るような取り組みもやっています。

ちなみに、授業に遅刻や欠席をしたりするとコーチから怒られるだけでなく、チームを追い出されることもあります。それだけ、コーチ陣は野球だけでなく、勉強にも目を向けています。

チームの結束力の強化

秋学期は、春シーズンの前にチームの結束力を強化するための期間でもあります。選手たちは、練習や試合を通じて、お互いを理解し、協力し合うことで、一体感を醸成します。また、秋学期には、チームのバーベキューやキャンプなどのイベントを行い、選手たちの交流を深めます。

アメリカの大学野球における秋学期は、春シーズンに向けた選手たちの準備期間として、練習や新入生の探索、チームの結束力の強化などの目的で活用されます。

春学期(1月から5月)

1月初旬から2月は、シーズン前の最終調整の時期です。秋学期やってきたことをもとにいよいよ全体のムードも高まってきます。寒いエリアの場合は、まだまだ室内での練習で実戦形式の練習が多くなります。

2月中旬から3月初めになるとシーズンが開幕します。 この期間には、大学同士の非カンファレンス戦(地域を超えた試合)が行われます。これは、シーズン初めの試合であり、各チームがシーズンに向けて準備するための重要な期間です。

この時期の試合は特に大事で、試合でも色々な選手を試したりして、3月以降で行われるカンファレンス(リーグ戦)に向けて、選手の最終評価を行います。そうしてレギュラーメンバーを決めていきます。レギュラーメンバーかどうか微妙な場合は、ここのアピールで一気にレギュラーになることも可能です。

3月中旬から4月初めは、春休みとなります。この期間中にも、大学野球の試合が多く行われます。大学野球は、カンファレンス(リーグ戦)が開始し、熱戦が続きます。それはこのカンファレンスの戦いから上位校だけが、リージョナル、そして州内チャンピオンシップへ進むことができるからです。

4月中旬から5月中旬は、地域ごとに複数の大学が集まって構成されるカンファレンス同士の試合が行われます。この期間は、各チームがカンファレンス内での順位を争うための重要な期間です。

ここでの成績や活躍により、4年制大学から声がかかり始めることが多いです。短大だとカンファレンスで上位校に入れなかった場合、4月末でシーズンを終えることになります。このシーズンを終えた成績をもとに、4年制大学と編入についての交渉もどんどん進んでいきます。

5月下旬には、NCAA地区トーナメントが行われます。このトーナメントでは、各地区の優勝チームが決定されます。優勝チームは、次に行われる全米大学野球選手権大会に進出する資格を得ます。

短大の場合は、この時期は、リージョナル(カンファレンスの上位校同士の戦い)やリーグ全体のチャンピオンシップが行われます。

6月初めから中旬にかけては、NCAAカレッジワールドシリーズが行われます。この大会は、全米の大学野球チームが参加し、優勝チームが全米の大学野球チャンピオンになります。この大会は、アメリカのスポーツの中でも最高峰の舞台のひとつであり、多くの野球ファンから注目されています。

6月から8月にかけてはサマーリーグも全米で行われています。リーグによりますが、早ければ1ヶ月ほど、長い場合は2ヶ月間で30−40試合ほどをこなしていくことになります。

週間スケジュールと1日のスケジュール

学生アスリートの1日のスケジュールは、そのアスリートが所属するスポーツの種目、大学のスケジュール、トレーニングや練習の量、そして他のアクティビティの量によって異なります。一般的なスケジュールを以下に示しますが、これはあくまで一例であり、個々の状況によって大幅に異なることに注意してください。6:00 – 7:00: 起床、シャワー、朝練
7:30 – 9:00: 朝食、クラス、授業(8時から)
9:30 – 11:00: クラス、宿題を進める、
11:30 – 12:30: 昼食、栄養補給
13:00 – 15:00: クラス、授業、課題 、練習へ
15:30 – 17:30: トレーニング、練習、スポーツ活動
18:00 – 19:00: 夕食、栄養補給
19:30 – 22:00: スタディホール(勉強会)、レポート作成、宿題 、自主練へ
22:30 – 23:00: シャワー、就寝の準備
23:00 – 6:00: 睡眠

もちろん、これはあくまで一例です、実際のスケジュールは、シーズンなどで大幅に異なる場合があります。学生アスリートは、スポーツと学業の両方をバランスよくこなすことが求められます。週末は、友達やチームメイトと買い物や食事、そして遊びに行ったりと、アメリカでしかできない経験もすることができます。

Student Athleteとして、大学野球の秋学期から春学期には、毎学期、最低12単位(1クラス3単位で、4クラス)に、最低4段階で2.0以上の成績を勉強面で残すのがルールとして定められています。今までの留学生を見ていると、2年で50−60単位をとり、GPAで3.0以上の成績を残すことが当たり前になっています。この生活から、文武で成績を残すためには、野球だけ、勉強だけ、遊びだけでなく、全てのバランスが大事になります。そうなると、普段から時間管理やその時間内で個人能力を高めるために何をするかが大事です。

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