【インタビュー】大学野球で全額奨学金の獲得までの道のりと、あえて断った進路判断(輝己さん)

留学して直面した現実と、最初につまずいた壁
実際に留学してみて感じたのは、想像以上に多くの壁があるということでした。
言語の違いや勉強の大変さももちろんありましたが、私が一番苦労したのは監督やコーチとの英語でのコミュニケーションです。
最初の頃は、英語を話す・話さない以前に、そもそも自分からコミュニケーションを取れていませんでした。練習中も指示を完全に理解できなかったり、分からないことがあっても遠慮してしまい、質問できないまま終わることが多くありました。
「このままでは何も変わらない。」
どこかでそう強く感じ、「今変わらなければ、一生このままだ」と思い、自分から行動を起こすことを決めました。

変わるために選んだ行動
――待つのではなく、自分から近づく
そこからは、意識的に自分からコーチへ話しかけるようにしました。
練習後にバッティングの話を聞きに行き、自分の何がダメなのか、どこを改善すべきなのかを質問する。完璧な英語でなくても、とにかく伝えようとする姿勢を大切にしました。
最初はうまく伝わらないことも多く、正直恥ずかしさもありました。それでも、少しずつコミュニケーションが増えていくにつれて、コーチとの距離も縮まり、野球に対する理解も深まっていきました。
今でも完璧とは言えませんが、「積極的に自分から関わろうとする姿勢」を持ち続けることで、確実に前に進めていると感じています。
大学での1日と、アメリカ大学野球との生活リズム
野球がある日は、朝6時45分から8時までウエイトトレーニングがあります。その後朝食を取り、9時からグラウンドでの練習が始まります。
練習は、走塁・バッティング・守備・バントといったすべてのメニューを午前中に行い、12時30分には終了します。練習後は昼食を取り、午後は課題の時間です。課題が終われば自由時間となり、夜ご飯を食べたり、アニメを見たり、最近では、来年からの就活に向けて少しずつTOEICの勉強に時間を使っています。
火曜日と木曜日は午前中に授業があるため、野球は午後練習になります。授業が終わり次第グラウンドへ向かい、チーム内での紅白戦を行います。長い日は13時から17時まで試合が続くこともあります。
日本と比べると練習時間は短いですが、だからこそその分「チーム練習以外の時間をどう使うか」が重要になる環境です。

留学を考えている人へ
――必要なのは自己分析する力
これから留学を目指す人に伝えたいのは、自己分析の大切さです。野球がうまくいかない時、言語の壁にぶつかった時、ただ闇雲に練習を続けたり、問題を放置したりしても状況は良くなりません。
「自分には何が足りないのか。
どうすれば改善できるのか。」
当たり前に聞こえるかもしれませんが、これが1年目の自分を大きく成長させてくれました。いつも自分の頭で考え、そして行動に落とし込めるかどうかで、野球留学の生活の質は大きく変わると思います。実際に私自身、自己分析を意識するようになってから、野球も勉強も良い方向に進み始めました。
野球と英語、両方で結果を出すという目標
今後の目標は、野球留学を通して語学力とコミュニケーション能力をさらに高めることです。野球では、次のシーズンで打率3割5分以上、ホームラン5本以上、さらに盗塁でも結果を残すことを目標にしています。
将来について考えたとき、現時点で目指しているのはプロ野球選手の通訳として働くことです。これまで野球に長く関わってきた経験があり、野球に携わる仕事をしたいという思いがあります。
また、私は人を支えたり、助けたりすることにやりがいを感じる性格だと思っています。選手と監督、コーチの間に立ち、言葉の壁をなくす通訳という仕事は、自分に合っていると感じています。

全額奨学金を勝ち取るまでのプロセス
――準備と行動を積み重ねて
私は2026年秋に4年制大学への編入を考えており、その準備として今年の秋セメスターから本格的に大学探しを始めました。
まず、自分のバッティング・守備・キャッチボール、そして1年目のシーズン成績をまとめた動画を作成しました。その後、現在の大学のコーチ陣に4年制大学の野球部コーチの方々へプレー動画を送っても良いか確認し、許可を得た上で複数の大学へ送信しました。
さらに、自分が興味のある大学を20校リストアップし、コーチからもコンタクトを取ってもらいました。個人的には、YouTube、X、Field Levelなどにも動画を投稿し、少しでも多くの目に触れるように意識的に行動しました。
全額奨学金のオファー、そして悩んだ末の決断
12月に入り、いくつかの4年制の大学野球部のコーチと話をする機会がありました。その中の一校から、全額奨学金のオファーを提示していただきました。
監督とは電話で直接話し、チームの方針や考えを聞き、同時に自分の目標や考えも伝えました。その後もメールでやり取りを続け、最終的に奨学金の詳細が記載されたリストが届き、全額奨学金であることを確認しました。
正直、「全額奨学金ならここに決めたい」という気持ちは強くありました。しかし、、、
なぜ、そのオファーを断ったのか
――将来を見据えた判断
進路を決める前に、私は多くの人の意見を聞きました。
岡野さんからは、「評価ももらえて、奨学金もすごい話だけど、本当に今この大学に決めていいのか」という指摘をもらいました。理由は、奨学金の内訳や大学のエリア、そしてシーズン前に進学先を決めてしまうと、次のシーズンでさらに良い成績を残した場合、より条件の良い大学や自分に合った大学からのオファーを受けにくくなる可能性があるからです。(*最終的には、契約書であるNational Letter of Intentにサインをしないと合意にはなりませんし、NCAAやNAIAなどリーグからの選手登録ができるかで最終的に判断されます。)
一方で、家族や友人からは
「全額奨学金は必要とされている証拠だし、試合に出られる可能性も高い」
という意見もありました。
最終的に背中を押してくれたのは、自分のプレーを一番みてくれ、理解してくれている現在の大学のコーチ陣からの言葉でした。
「お前はもっと良い条件で、もっと良い大学に行ける」
その言葉を受け、自分自身でも改めて考えた結果、今回はこのオファーを断る決断をしました。

遠回りでも、自分が納得できる道を選ぶ
全額奨学金を断るという判断は、簡単なものではありませんでした。ですが、自分の将来を考えたとき、「今の安心」よりも「これからの可能性」を優先したいと思いました。
この選択が正解かどうかは、これからの自分次第です。だからこそ、次の2月からの大学野球シーズンで結果を出し、より良い選択肢を自分の力で掴みにいきたいと思っています。
東海大学付属札幌高等学校→West Hills College
加藤 輝己



